ワシントン・ポストはなぜ危機を乗り越えたのか

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過去記事です.

ワシントン・ポストはなぜ危機を乗り越えたのか―バフェット流経営術の真髄

ワシントン・ポストがいかにして今の地位を築いてきたかについての本です。 個人的には、インターネットが普及してからの紙媒体の没落からの復活がメインかと思っていましたが、もっと古く1,900年初期のころからの話から始まり、競売に掛けられ富豪に買われていきつつ、今のドン・グラハム(ジェフ・ベゾスに買収されましたが)が率いるまでの歴史などを振り返るものでした。

また、(2,011年当時)最終的には「メディア」企業から「教育」企業へと軸足を移していくことで生き延びてきている様子が描かれていて、Web化は割と早くから取り組んでいて評判も上々だったらしいワシントン・ポストでも、メディアでの収益化は上手くいってないんだなーと改めて思った次第です。

さて、少し期待はずれだったところもありましたが、感想を少しと今後への思いなど。

昔からメディア企業は儲かっていなかった

全盛期と言われた1970~1980年あたりはともかくとして、1,900年初頭頃〜中期もメディアは儲かっておらず、金持ちの富豪が道楽または社会貢献の一環として支援しているものでした。 政治的な意図がどれほどあるかは知りませんが、少なくとも表向きはジャーナリズムはある種NPO的な社会的公器としての役割が大きく、そもそも独立してビジネスとして成り立つようなものではなかったのではないかと思います。

ようやく黒字化していた時でさえも、 > 利益率7%は多すぎだ。

との声もあったようです。

バフェット流とは

ドン・グラハムの前の代表のころから、ウォーレン・バフェットが大株主兼アドバイザーとして貢献していたようです。 何をしていたかというと、自ら経営には口を出さず、当時の経営陣から意見を求められた時のみアドバイスをする、という控えめな姿勢だったようです。 この裏には、株のクラスA・クラスB(経営に口を出す権利があるかないか)といった仕組みも絡んでくるようですが、現場をよく知る優秀な人に全て任せたほうが良い結果が出る、といった哲学のようで、その結果はご存知のとおりです。(アメリカでは割とポピュラーな仕組みのようです)

ジェフ・ベゾスの買収

さて、冒頭で、いまやワシントン・ポストは「教育」企業だと述べました。 ベゾスの買収の真意は明らかにされていませんが、個人的には資産家の道楽・社会貢献の類ではないかと考えています。教育かメディアか(あるいは両方か)の分野においての社会への貢献。もちろん一定の収益は上げていくとは思いますが、それは結果であって目的ではないのではないかと。独立性の担保のために、amazonとの表だった連携はしないかと(内部のIT化については進めていくでしょうが)。

今後のメディア産業

産業と呼んでいいものかわかりませんが、僕個人としては、社会的公器として収益を上げつつ独立性を維持していくことはムリに近いというか、目指すべきではないのではと思っています。

「金を儲けないと維持できないよね。そのためにはユーザーからどう課金しようか」というモデルのものより、「一人でも資産家から資金援助を受ければいいんじゃね?」とNPO的に考える人達がもっと増えてきそうな気がします。 「それでは独立性の担保が…」という声もごもっともでその不安はありますが、海外の成功した富豪達を見ているとその不安は少なく(前述のバフェットの哲学しかり)、メディア人がお金稼ぎを考えなくてはならない状態よりも健全な気がしています。

そして、そこへ集まる人々も「給料・待遇がいいから」などといった理由でなく「社会的使命感・単純な趣味・好奇心」などになるのではないかと。 さらに言えば、大人数で足を活かしての記事執筆ではなく、優秀な少人数の人たちのキュレーションの形で十分ではないかと思います。

僕は、「大量生産大量消費」→「情報化社会」の次は「思想や哲学」が来ると思っています。資本主義といった概念を少しはみ出したこの考えに近いのは、まずはメディアではないかと考えていますよ。

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