5年後、メディアは稼げるか

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5年後、メディアは稼げるか―Monetize or Die ?

名前だけで買ってしまった。 内容はとても面白くて、ネットが普及してしまったせいでパラダイムシフトが起きてる、理想論的な話だけでなくてもっと現実を見ないとメディアは生き残れない、っていう話です。

大きく以下にまとめます。

  1. 広告収入について。
  2. ビジネスモデルの再構築を。
  3. 組織から個人へとフォーカス
  4. 記者より編集者・ビジネスサイドの人材が貴重に。
  5. そうは言っても。
  6. まとめと感想。

1.広告収入について

ネット広告が普及してきたことにより、紙は購読者も減少気味で広告案件も減っている。 かといってネット広告は単価が安い。アメリカでは、 紙:PC広告:モバイル広告が 100:10:1 の単価感らしいです。

ネット広告はアドネットワークという広告最適化サービスがありますが、誰でも使えるものは単価も落ちる。どこぞの2ちゃんまとめサイトと同じような収益になってしまうわけで、需給バランス的に広告枠の供給が多すぎるのが問題です。1PVいくらとかなると、PV至上主義になりますし。

じゃぁどこで差別化するかというと、ブランディングか独自のデータ活用なのです。 (ちなみに、PVを増やす施策からブランディングは難しいが、単価上げるブランディングからPVはなんとかなる例が多いです。)

2.ビジネスモデルの再構築を

アメリカなどは、規模や流動性から様々なトライアンドエラーをしています。生き残りに必死で、だいぶリストラとかも行っています。後述しますが日本は、雑誌はボロボロつぶれてます。新聞はしぶとそうです。

マネタイズには色んな種類があります。

まずは広告収入。

前述のとおり、ブランディングが独自データが必要です。ブランド力があれば、媒体から純広告をもらったり、広告記事などで収益化することが出来ます。独自データは、主にユーザーの特性分析で、事前に会員登録などさせることによって、より細かいユーザーに広告をリーチすることが出来ます。

次にユーザーからの購読料の課金。

アメリカはフィナンシャル・タイムズを筆頭に、メーター制が人気のようです。(詳細は省きます)日本ではニコニコ動画が課金で成功していますね。 要はライトユーザーは無料で、ヘビーユーザーへは課金、といった形が主流に思えます。ちなみにこの課金モデルは一般には、紙の実績があること・経済系、富裕層向けのジャンルであること・圧倒的な読者数を持っていること、が必要のようです。例えば筆者の属する東洋経済だとまだ読者数が少ない、まとめサイトなどは、扱う内容が金払うまでではないため課金は上手くいかないでしょう。

メディア人たるもの、できるだけたくさんの人に記事を読んでほしい気持ちはありますが、いかんせんビジネスだというところと、人は無料記事は価値は薄いと判断し読み流す傾向があります。

3.組織から個人へとフォーカス

紙の頃は、パッケージで売っていました。記事単体でなく総合的な媒体の信頼性で。 ネットは縦横無尽にあちこちの媒体の記事に飛べます。そこでは記事単位での競争が起きます。そのときに質や信頼を担保するのは、誰が書いたか?です。

更に言うと、紙は客観報道や曖昧な表現が好まれますが、ネットはより感情的な、断定的な表現が好まれます。ぶっちゃけて言えば客観報道は書くのが楽ですが、そんなのはどこか一社がやれば十分で、残りは独自の色を題していく必要があります。

アメリカのとある媒体では、PVやユーザー数など全ての情報を可視化し、成績に応じた待遇へと変わりつつあります。つまりその媒体に属していればいいわけでなく、その中で競争をする必要があるということです。 さらに言えば、競争相手は同業だけとは限りません。ネットは双方向のメディアで、いわゆるブロガーさんや、著名なビジネスマンとかも文章を書きます。しかもそれが独自の視点や知見を持っていると非常に強い。専業の記者といえど平凡な内容では生き残れません。

4.記者より編集者・ビジネスサイド

これからの時代に必要なのは記者より編集者、読者目線の人。 というより、『記者』というスキルが必要なことはあまりなくて、事実の客観報道は一部で十分、その他は第二報で差をつける必要があってそれは読者のニーズを察する能力であったり、豊富な知見や独特の視点が必要。 また、媒体に応じて表現方法を選び変えられる能力も求められます。

加えて、テクノロジー・ビジネスに関する造詣がないと、このパラダイムシフトに飲み込まれてしまうでしょう。頭を使えない駒を雇用する余裕はもうないのです。

さて、だいぶムチャぶりでしたが、これらを満たすためには、教養をつけること、自分の思考を深めること、文章力(≠記者力)を磨くこと。

参考までに筆者は、教養や文章力は古典から学ぶのが良いと言います。また自分の思考を深める時間を作ること、そのためには孤独を苦としない精神力の人がいいと。

5.そうは言っても

紙の意義はデザイン性やパッケージ性。さらに言えばデジタルが苦手な世代もまだまだ多い。ファッション系などは生き残りそう。

色々不安を煽ってますが、日本の新聞社とかで改革が起きないのは、現状まだ食えてるから。 ゆうて日本の宅配システムが優秀すぎてなかなか購読者は減らず、いざとなれば不動産資産もたくさん持ってるのでまだ生き残ります。そうなるとイノベーションが起きない。起こす必要がない。

大手サイトでも一億PVいかない。東洋経済オンラインでも5000万少し(それで経済系トップらしい。) アドネットワークだとせいぜい1PV=0.1円とかなので、これだけじゃ維持できない。

6.まとめと感想

公平な情報発信のために、昔からビジネス(主に広告)と記事はお互いに独立していなければ、という意識がありました。それはもちろんなのですが、全く考えなくていいわけではありません。 むしろ現状では、ただ記事を書けるだけような人材の価値は下がってきています。自分勝手でなく、広告主に媚びるでもなく、消費者に必要とされるような情報を提供していかなければ生き残れなくなってきたのです。

そもそもなぜネットにここまで翻弄されるかというと、だいたいの媒体は、ただ情報を伝えるだけで、それは物理的なメディアを用いるより、ネットに乗せるほうが合理的で、理想の状態といえるから。 ここでうまい具合に淘汰されて、あるべき姿になる、良いものが売れて人気を集める時代にしたいと思います。優秀な記者や製品、広告といったものが評価される時代に。

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