幸福の計算式

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幸福の計算式 結婚初年度の「幸福」の値段は2500万円!?

幸福は定量化できるか?

幸福は定量化・数値化できるのか?という問題に対して全力で取り組んだ本書。人によっては「何勝手なこと言ってんだ!ふざけんな!」などと怒ることになるかもしれませんので、予め忠告しておきます。だって、本のサブタイトルがもう喧嘩売ってるもの。

少なくとも、優先順位はつけれそうですね。ミカンよりリンゴの方が好き、という人が多ければ、一般的にリンゴの方が幸福度が高められるのでしょう。 もちろん中には、「俺はミカンの方が好きだ!」なんて人ももちろんいるし、「どっちも嬉しくない」なんて人もいて、人によって幸福度の上がり方は異なるのは当然です。

「幸福なんてひとそれぞれだろ!それを研究して定量化してしまうなんてバカげてる!」という人もいるかもしれません。しかしよく考えて下さい。

『人による』と言ってしまっては何も始まりません。法律や社会秩序において、『考え方はひとそれぞれだから』なんて言ってしまっては社会が回らなくなります。仕事も全てそうです。IT化が進んでハッピーになる人もいるけど、職を奪われたりする人も当然います。車は事故る可能性があるのに、大勢の人が乗っています。

ある程度の平均値を考え、それを最大化することを目標にしながら、例外をきちんと許容すること、これが政治の役割、社会の在り方じゃないでしょうか。その最大化のためのロジックがあるのなら、ぜひ参考にしたいじゃないですか。

それでは本書の細かいところに移りましょう。

人は相対的に幸せを感じる

自分の収入が増えたら、もちろん人は嬉しくなる。なら全国民の所得を増やせばいいじゃないか、と考えると、それも違うらしい。貧乏というのは相対的なもので、全ての人が豊かになったということは、実は誰も豊かになってないのと同じことになる。

僕らはお金をたくさんほしいんじゃない。「周りより多くほしい」んだ。

他にも、犯罪が多い地域ほど犯罪被害者の不幸度は少なく、その他の人の幸福度も小さい、というデータがあります。 要は、犯罪の被害に遭うことは確かに不幸なのだが、みんな被害にあってるならそんなに気にしない。事象それ自体でなく、それが当たり前なことなのかどうかで抱く幸福度は変わるから。

仕事も同じ、体重も同じ。ただし、その基準が甘くなると人は努力をしなくなる。周りを見て自分と大差なければ何も焦ったり頑張ったりしないよ、だって疲れるもの。その結果、肥満者は増え、失業者も増え、効率の悪い仕事ばかり回っていく。世の中はこういうものらしい。

メディアを用いた実験で面白い結果が得られました。とある価値観の放送を長い間聴き続けた人は、自分の価値観は変えないまでも、世の中の基準はそうなのだと認識し、許容するようになったというものです。 他のボランティアの実験でも、行為の倫理的な正しさを訴えるよりも、「みんな協力してくれた」ことを訴えたほうが行為をしてくれる人が増えたそうです。 個人の信念を変えるのは難しいが、世論や世の中の基準を変えることはできる。人は理屈よりも同調意識で動く生き物である。

結局人は相対的にしか判断出来ない、ということをはっきりと自覚し、幸福を追い求めすぎないことが大切だと言えます。 一度幸福を手に入れてしまったら、それ以上を求めてラットレースになるだけなのだから。人は幸福を求めるがゆえに不幸になる。それを解決するには、中道を行くこと。幸福を与えてくれるものにしがみつけば将来不幸になる。心の内側から幸福を描き出すことが大事。 (計算式、なんてものから離れてしまいました。)

思い込みの話

子供がいることは夫婦関係にとって、個人の幸せにとってマイナスだというデータがあちこちである。子どもを産むと、一年以内にはもう、95%の人の幸福度は生まれる前より下がっているとか。 そしてその下がり具合に慣れるのが5年後くらいらしい。まぁ子どもを持てる代わりに世話に時間が取られて、精神的な安定も、夫婦の時間も、友達付き合いの時間も減ってしまうのは理屈ではわかります。 が、それを指摘すると大抵の親は反発しますよね。。。 まぁ、離婚率35%とかいっててもウチは大丈夫、って言うようなものでしょうか。後戻り出来ない選択をした後は、それを正当化しようとする意思が働くものです。

じゃぁ、まだ子どもを産んだことないけど産みたい、って夫婦はどう考える?産まないほうが幸せになれるよ、なんておせっかいを言ってもまぁ聞かないでしょう。理由を聞いても、まともな理屈の答えは返ってこないでしょう。

「人は子供を生むものだ」とか、「次の世代がいなくなったら社会が成り立たない」なんて言うのはナンセンスです。 自分の子供を、社会のために人として必要に迫られて、産みたいと思う人なんてほとんどいないでしょう。 だから産むなって言う訳じゃないんですが、産んだ後の責任が問われる事が多い昨今、もう少し考えて、幸せは減っちゃうかもしれないけど産みたい、と思えて初めて産むとかしてほしいなと思います。

時間が解決してくれる話

時間は幸福も不幸も風化させてしまう。生まれながらの美貌や障害も、あまり影響を及ぼさない。もう慣れちゃったから。人はプラスの感情に特に慣れやすい。マイナスの感情も少し遅くはあるが慣れてしまう。

感情を想起するのは、そこに注目するから。何かを感じ取ろうとするから。逆に言えば、理解すれば注目はなくなり、感情の変化もなくなる。例えば人が死んだ時に、葬式を行うことで、理屈ではっきりと死を理解できる。そうすると感情を乗り越えられることが多い。

逆に日々感じざるを得ないこと、注目しなければいけないことは長く感情に影響を与える。失業者はいつまでも不幸な感情が残るものらしい。それは社会的なステータスだったり、これからの生き方を考えなければいけないから。

まとめ

政治の存在意義は、言ってしまえば地域レベルで幸福の最大化を行うことです。政府は幸福度を考慮すべきですが、ただしそれは幸福指数を元にしろと言うわけではない。 短期的な幸福を求めて耳障りの良いことばかり言うのではなくて、長期的な最適解を示さなければいけないと思います。そのためにこういった計算式も参考になるかもしれない。

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