マネー・ボール

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マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男

ブラッド・ピット主演で有名な映画の原作です。

ストーリー

お金もない弱小球団を、主人公のビリーが改革していって強くする話です。お金がないので、人気の選手を集めることが出来ない。そのため、データを駆使して、埋もれている才能を掘り起こして安く使い、効率よく勝ち星をあげようといった作戦に出ます。

野球選手

話は、ビリーがプロ野球選手になるところから始まります。 当時圧倒的な才能と実績を引っさげて、鳴り物入りでデビューしたビリーでしたが、これまで苦労や挫折を味わったことがない分打たれ弱く、ふとしたきっかけからドンドン調子を崩してしまいます。 バッターボックスに立っても、以前のミスが思い返され、恥をかきたくないと緊張して空回り。その後ベンチで暴れ回り、またふて腐れるといったような。

彼ほどの才能を持っていても成果を上げることは難しいようです。対照的にメンタルが非常にタフで努力を怠らない同僚がドンドン活躍していくのを見て、ビリーは野球選手に向いていなかったことを悟り、球団の運営側(ゼネラルマネジャー)へ転向します。

挫折の経験があるかどうかがいかに大きいか。精神状態によって実力はこれほど変わるのかを感じました。なまじ肉体的な才能に恵まれすぎていたために挫折を知らないヒーローの末路でした。才能とは、わかりやすく表れるようなものだけでなく、どれだけ実力を発揮できるか、努力できるかの方が大切かもしれません。

球団経営

次に球団経営について。 大元(オーナー)が球団を運営する理由は、企業のPRのためと、お客さんにお金を多く落としてもらうことが目的です。そのために、どのチームも熱心なファンを増やすことに尽力します。

では、どうすればファンが増えるのか?人気選手をいれる事?突飛な戦術を次々と実行すること?

答えは勝つ事です。 勝てば無名の選手でも人気者になり、普通の戦術でも評価されます。逆に、人気選手ばかり集めても勝てなければ人気がなくなるし、面白い戦術もバッシングを受けます。

そのため、ビリーは今までの業界の考え方を捨て、独自の基準で選手を評価し、限られた予算の中で最大の勝ち星を上げるべくデータを駆使します。その結果、バント・盗塁しない、長打より四球でもいいから出塁。といった先述を打ち出してチームを勝利に導いていきます。

なぜビリーは新しい基準を取り入れることが出来たかというと、過去の失敗が大きかったように思います。自分が正しいとは限らないこと。自分と違う価値観を取り入れること。 初めは疑いが強かった球団内でも、実際にビリーに従っていくとたしかに勝ち星が増え成果が出て行ったので、ビリーの考えを認めるようになります。そして、チームはプレーオフに駒を進めるほどになりました。

ところが、あとがきでありましたが、ものすごい大成功を収めたにも関わらず実際にビリーはものすごい勢いで業界からバッシングされたらしいです。 プレーオフで(たまたま)負けてしまったから、「ビリーのやり方はやはり間違っている」との声が高まりました。

結果だけ見るとビリーが正しいのですが(試合数的にシーズンの結果が妥当。プレーオフは運の要素が強すぎた)、業界の大多数は自分たちのこれまでの考えが否定されてしまうので必死で抵抗します。 そして、その意見が大多数だとそれが主流になってしまいます。過去の成功や、自信のプライドが人を縛り付けてしまうようです。

こういった旧態依然とした価値観の人たちには、データを尽くして口でいくら論理的に説明しても納得しないようで、ビリーが球団内でやったように、実際に成果を上げて見せつけてやるしかないようです。(今回で言うと、プレーオフで勝つまで)

まとめ

さて、本を読めばわかりますが、旧式の考えの人たちの頭の固さへの苛立ちがすごいです。データを見せられても納得しないこれら野球業界の体質を馬鹿げた事と憤ると思います。

野球界に限らず、旧式の考えのおっさんが多く居ますが、しかし翻って僕らはどうでしょうか?僕らも人のことを言えるでしょうか? たとえば、結婚は素晴らしいものだとか、人生顔じゃないとか、宗教は全てアブナイとか、何の根拠もなく思い込んでませんか? それを否定するデータはイロイロあったりしますが、たぶん多くの人は反発するでしょうし、それが間違ったこととも思いません。

論理的に説明されても納得出来ないことは多くあるわけで、それをどう伝えていくかが今後の課題です。

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