チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド

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チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1

日付が変わりそうですが、今日は8月15日、終戦記念日でした。 広島と長崎に原爆が落とされてようやく終わったアレです。原爆ドームは今なお立ってて、修学旅行とかで行きますよね。

ちなみに、「あの原爆があって良かったんじゃないか」と言う人もいて、理由は、あれのおかげで負けを認めることが出来た、もし続いてたら自国も他国も、もっと多くの人が死んでたかも、というものです。 歴史にタラレバはありませんが、こんなシンプルなものでも、絶対的に悪とは言い切れないものです。。。

Summary

悪名高き「チェルノブイリ原発事故」から25年以上経った今の現地はどのようになっているか、そこから、フクシマをこれからどうすればいいか考えようじゃないか、というのが論旨です。 序文にあった、「欲望と悲劇の交差点にようこそ」という一文が好きです。

ダークツーリズムとは

悲しみの継承。過去の悲劇に触れることで、過ちを繰り返さないようにと反省・学びを得るもの。被災地への支援という意味も併せ持つことが多い。

発信者としては、チェルノブイリ事件は全ての人が知っておくべき事件だと考えていると思います。が、普通はそんなネガティブなものを観光に来てまで見たくありません。 人に来てもらうには、発信者視点でなく受け手視点で考える必要があります。

この取材の中では、そういったところまで考えている現地の方のお話がたくさん掲載されています。 例えば現地の博物館。 展示というとドキュメンタリーな生生しいものが多いと思いきや、70%くらいは哲学的なアートになってるらしいです。そこで、ザワザワと心が動かされる感じ、理屈でなく感覚で味わう感じ、を狙っていて、実際にデートで訪れたりリピーターも多いそうです。

また、観光客の態度に対しても柔軟です。ウクライナ発のFPSゲーム「S.T.A.L.K.E.R. 」が大ヒットし、聖地巡礼のカンジで来る人が増えたようですが、現地民は、なにより風化することが怖いらしく、「ゲームでもなんでも、関心をもってもらえたら十分」という認識が一般的なようです。作業員も、「俺らの有志を見てくれ」くらいなカンジらしいです。 ちなみに、事故直後は「事件のことは忘れたい」派が多かったが、だんだんと「後世に残すべき」派が増えていったらしいです。これは今のフクシマにも同じことが言えるのではないでしょうか。

感想

この悲惨さを知ってほしい。けれど、「知らせなければ」「啓蒙しなければ」と押し付けになってしまうのではなく、一人一人にもっと関心を持ってもらいたい。そのためには、理性だけでなく感情に訴える必要がある。

これはどの情報発信においても同様だと思っていて、しょせん人間は感情がメインで理性はその後付けだったり手段に過ぎないので、どう心に届けられるか、というのが情報の発信者の務めであると考えます。

ネガティブな非日常に触れることで、普段行きているこの日常がどれほど良いものなのか、見つめなおすことができると思います。楽しむために行くのではなく、日常を楽しめると思えば、案外悪くないのかもしれません。

オマケ

ただし、ウクライナは今だに電力の半分を原子力発電でまかなっており、即時廃止を求める声は多くないようでした。感情に訴える部分はどうしても主観的になりがちなので、そこのバランスは非常に難しいところです。

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