僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか

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僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか 絶望から抜け出す「ポジ出し」の思想 (幻冬舎新書)

わりとメジャーになってきたのかわかりませんが、荻上チキさんの本です。むちゃくちゃ頭がいいんでしょうが、コメンテーターとしては話が難しくて理解が追いつかないところがありました。文字だったら自分のペースで読めるからこっちの方があってるのかなと。

内容は日本の現状について。ダメ出しじゃなくて前向きに話そうよ、という趣旨です。

日本は戦後、強さ(経済成長・富の増大)ばかりを求めてきましたが、最近では優しさ(再分配・精神的な安定・協調)を求める声が強くなっています。しかし、これらは二項対立で論じるものではなく、両立しなければ良い社会になりません。強さだけだと格差が広がり治安が悪化、優しさだけだと再分配できるパイ自体がどんどん減ってしまいます。

世間でよく「構造改革」が叫ばれていますが、現実の構造改革とは、政府の支出の削減だそうです。「官から民へ」も同じ理由です。真の構造改革は既得権益が強くて今の安倍さんも思うようにいっていません。 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36276

労働人口が減ったからデフレは仕方ない、わけない。他の国は成長しています。(インフレが進んでいるとも言える) 何にせよ、将来の成長が見えなければ、嗜好品や不動産には手が出せません。下がるとわかっているものを買う理由はないから。脱成長には、お金儲けだけが価値でないという清貧の考え方がありますが、個人はともかく国全体ではナンセンス。全体のパイが減ったら再分配もままならない。 (そういう意味では今のアベノミクスは正攻法だと思います。が、最近読んだ本がそっち系ばかりなので影響を受けてしまっている感も否めませんが。)

生活保護受給者はその連鎖から逃れられない仕組みになってしまっている。

→貯金などしてはいけないので原資が溜まりにくい。受給者は良い職を得るのも難しい仕組みになっている。 社会的弱者とは、弱い状態を(国に)放置させられてる人である。犯罪者も、出所するときに手持ちのお金は乏しく再就職なども難しいことから、やむなく再犯が起こりやすい状況になっている。

政策にはコストや副作用の試算・権益についても考慮が必要。

→例えばネカフェ規制は思ったより効果はないかも。年間数十件で全体の0.1%とか。 それなのに進めるのは警察の捜査範囲の拡大のためだという。放っておくと彼らの権益と引き換えに自由が奪われていってしまう。

そもそも官僚(他公的機関も同様)が省益にはしるのは、サラリーマン的な組織になってるから。組織ではなく国民益にフォーカスしすぎると組織から飛ばされてしまう。

ジャーナリズムについて。

メディアの本来の役目として権力の監視があるが、今の日本では機能していない。 メディアに必要なのは、批判される覚悟。メディアの検証が必要になってくる。動画のアーカイブ化など、全ての報道は検証されるべき。マスコミの記者によっては実名を出して批判されるのが怖いという意見が多い。

具体的な行動 実際に何ができるのか

シングルイシューのセミプロ化→どこかの分野に特化してセミプロ化する。そこで政策に関わっていく。 他は省略します。

最後に、少し個人的な感想を。

イロイロと本を読んできましたが、資本主義の本来の目標は人々の幸せの最大化だと思っています。経済のシステムが資本主義なのはおそらく変わりませんが、資本至上主義ではたぶん幸せになりません。強い国(資本主義)と優しい国(社会主義)を共存させていかなきゃいけないなと思います。そしてそのためにはやっぱり教育でしょうか。別に大人になってからでも教育は受けられます。

また、どこまで当事者意識を持てるかだと思います。「問題だとは思うけど、まずは自分のことで精一杯」という人が大半だと思う。が、その考え方ではいつまで経っても自分のことから抜け出せない。「とりあえず自分が食えるようになったら」って、ソレいつになったら達成出来ますか?という話な訳で。 どこまで自分事として捉えられるか、それを変えようと思ってもやっぱり教育でしょうか。まずは選択肢を与えることからだと思っています。 「環境が心を作る。心が環境を動かす」 環境の一助になれればいいなと思っています。

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