ヤバい経営学―世界のビジネスで行われている不都合な真実

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ヤバい経営学―世界のビジネスで行われている不都合な真実

ビジネスの世界における不合理をつらつらと語っている本です。しょせん人の営みなので、頭いい人たちとはいえ理屈に合わないことは多いし、社会でやってく以上は理屈だけで判断はできないよってことも書かれてます。

この本を読もうと思った理由が、「社会は不合理で満ちている」事例を再確認したいためだったりするので、例によって個々の内容を箇条書きする程度にします。 読みやすいのでオススメ。

環境の大切さ

→人の意思は弱いものです。自分がどうあれ周りに流されてしまうのが宿命で、それでこそ社会的な生物です。 自分から環境を整えることが大切。

多数の無知 黙ることの雄弁さ

→現状に文句を言わない、何も表明しない時点で賛成しているとみなされる。もしなんとなくモヤモヤを抱えてたとしても、黙ってる人が集まれば、内心どう思っていようが合意形成が取れてるとみなされ否定的な発言はしにくい。

戦略には相手の出方も含まれる

→何事もそうだけど、絶対の戦略・指針はありえない。常に周囲の環境を意識することが大事で、軌道修正には長期的な視点が必要。

日本企業は雇用を守るために不合理を受け入れている。

→コレは直接本の内容ではないんだけど、日本は他国より協調性を重視する傾向にあります。 まずは国民の生活を確保するために雇用を守ろうという国なわけですよ。

サルとハシゴの話

http://www.geekpage.jp/blog/?id=2007/10/22

ゴミの分別のキャンペーンの文字をどうするのが一番効果があるのかについて、「みんなやってるから」という内容が一番効果があった。

→知らないうちに周りから影響を受けている、あの人が言うから、周りがやっているから、というのは8割方正しい方法でもある。そういう意味で、シェアトップの製品は強い。買う際の言い訳になるから。安心感を得られるから。 だけど自分で考えるくせをつけないとそれ以上になれない。

製薬会社はマーケティング、医者の接待、に莫大なお金を使っている。新聞の紙面が大きいことに今は理由はない

→無駄だとわかっていても他社がやめてないのにそれをやめたときのリスクを考えられないから。プロスペクト理論では、自分だけ小さな損よりも全体が大きな損をするほうがマシと考える人が多い。

戦闘機の例:帰還した戦闘機を見て、壊れた場所ばかり補強してしまう。本当の急所はやられた時点で帰還できないため、そもそも情報が偏っていることになる。

→データの見方が大切。本当に客観的な情報は存在しない。

大抵の経営戦略は、立てたあとに理屈付けされる。

→新しいことに数値化できるようなデータはないのだから。データに頼りすぎてはいけない。

世の中の成功者は、たいていが運の良かった人。きちんとした戦略があった云々は後付け。

→お金を稼ぐ時に、地道にやるよりも当てずっぽうに賭けたほうが当たった時にデカイ。(地道な運用で毎年10%よりも、博打で100%の方を人は成功者と呼ぶ)派手な戦略や画期的なやり方は、振れ幅が大きいだけで平均は普通と変わらない。人は、たまたまうまく行った人を褒めすぎ、失敗した人を貶しすぎるきらいがある。

時間の不経済

→一日30分を、一週間に一回3.5時間やったって同じ効果は得られない。脳みそ的の仕組み的にそうなってる。 要は、急な成長を狙って無理をするよりもコツコツやってかないといけないよっていうこと。人は長期的なプロセスよりも、短期的ですぐに結果になりそうなことに注力しがちである。

投資銀行の矛盾。

→投資銀行のアナリストは、お客さんとして企業を抱えることもあれば、アナリストレポートとして株の売り推奨、買い推奨などの評価をする。当然、評価される企業としては売り推奨なんてされたらたまったもんじゃないので、良い評価をするようにプレッシャーをかける。その結果、一般的にアナリストの評価は8割方好意的な評価をしたり、買い推奨予定などといった曖昧な言葉で濁すこともある。いいかげんだ、とかではなく、そういうものである。

取締役の人たち

→基本的に代表が指名するので、彼を優遇する人が好まれる。もし批判しようものなら回りからやいのやいの言われる。自分と価値観が合う人を評価しがちになり、似たような思考の人が集まるのは当然。報酬もお互いに援助し合い、ここまで膨れ上がってる。

賞与がストックオプションの理由

→ちょっと考えればわかります。

人は予言の自己実現に陥りがちである。

→例えば、イケると感じた商品のプロモーションに費用をかける。結果として売り上げは上がるが、その要因は費用をかけた分だけで、他の商品と大差ないことがほとんど。 同様の理屈で、教師が目をかけた生徒は伸びるものである。

よくあるビジョナリーカンパニーは因果関係が逆なことが多い

→ビジョンがいいから成功したというより、成功したからビジョンがしっかりしてる、もしくはしっかり見える。

良く自然淘汰とか弱肉強食とか言われるけど世の中そんなに合理的にできてない。業界にはどこのだれが始めたかわからない因習が多々あるもの。

イノベーションを生み出す会社が本当にいいのか?

→そういった企業は普通の会社よりも存命期間が短い。社会的に必要とされてれば残っているはずでは?

会社はなんのためか?資本主義においては、株主のためという考え方が大半。

野球の世界において、給与格差が大きいほどチームの成績が悪いことが確認されている。

→よくある成功報酬制にすることは、仕事の効率に直結しないどころか逆効果なっことが多い。

まとめ

こういった不合理を真っ向から否定できるのは相応の力を持った人だけだと思う。 ハロー効果というものもある。ホリエモンがあれだけ強気なのは、既に成功しているからに過ぎなくて、同じことをヒラが指摘しても誰も関心を示さない。

よくある因習は誰もが少なからず感じていて、ただそれは文化として根付いてしまっているので、力のない個人が変えることはできない。変えたかったらまずはそのルールで勝ち上がるしかない。

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